【書評】『手のひらの音符』
『手のひらの音符』-藤岡陽子著
私は本屋通いを趣味の一つにしている。
仕事終わりや何もない日でも本屋へ赴く。
先日いつものように家の近くの紀伊國屋書店へ散歩に行くと、素敵な装丁に魅かれた。
独特な人形の写真。
暖かく優しさを感じるこの人形に見覚えがあって手にとってパラパラめくりながら、
どこかで見たことあるなぁと思ってない頭で考えてみる。
.................................................................思い出した。
"にしおゆきさん"だ!!
(にしおゆきさんは陶芸人形作家さんです)
先日高円寺で個展を開かれており、妙に頭に残っていて思い出した。
私のつたない語彙力ではうまく表現できないのがもどかしいが、個性的な世界観が表現された作品の数々は、ついつに購入したくなるものばかりだった。
いつか金銭を考えずに購入できるくらいの大人にはなりたいと願うのです。
ここであったも何かのご縁と、迷わずレジに持って行き本作の読書が始まった。
まず、伝えておきたいのは、本作はとても香ばしい小説であるということである。
何が香ばしいって続けざまにハードな不幸が主人公や登場人物に容赦なく襲いかかるのだ。
正直言って物語の中盤くらいまで読むのがシンドイ。
仕事終わりの疲れた体とすさんだ気持ちで読むと涙がこぼれそうになることがしばしばあった。
だってやたら不幸が続くんだもん!
しかも主人公報われないんだもん!
やってられないよもう!
ってな感じなんですよ。
ことごとく身内や友人に不幸が襲い、さらには自分自身にもそれがやってくる。
しかもどうにもならないことばっかり。
ただ、そんなことばかりではなくて随所で助けてくれる人が現れる。
高校の頃の先生であったり、専門学校の同級生であったり。
社会人になってからも彼女の周りには優しい人が溢れている。
(主人公は女性で、服飾関係の職に就いている)
それが救いで彼女が前に進みながら大切な決断をしていく彼女の姿は、込み上げてくるものがあった。
決断すること。自分の人生を正面向いて受け止めること。
どんなことがあっても前に進んでいくこと。
そんな最後に彼女に
本書の彼女の生きざまは今様々なコトに悩んでいる私に、一歩踏み出す勇気をくれた。
(きれい事言ってるけどツラい気持ちからはいつだって逃げたい)
それでも生活は続く
人生の8割はツラいこととはよく言ったものである。
自分でもどうにもならないコトに直面する時が人生において多々存在する。
悔しいけどどうにもできないことばかりだ。
辛くとも、悲しくとも、それでも生活は続く。
いつもお気楽に生きている私にも、ここ最近考えさせられる出来事が続いている。
母親のいない私にとっての親代わりだった祖母が昨年他界したり、
最近では叔父がマイコプラズマ肺炎になって命の危機に陥った。
このように自分ではどうにもできない悲しみが突如襲ってくることは、生きているとしばしば起こる。
祖母が亡くなった時はとても落ち込み、体重が100kg近い私ですら多少食欲がなくなったし、叔父さんの話を父から聞いたときは、まだまだ年齢が若いにも関わらずこのようになるとは思ってもみなかった。(現在は一命を取り留めている)
最近このような出来事が続くと、人の命は儚くていつでも死が身近にあるような気がしてならない。
自分もいつ向こう側に行くかわからないと思いながらも日々を生きていると思うと、日常に生きる"目的"や"意義"を持つべきだなんて考えたりもする。
けれどもそんなことを常々意識して生活しても疲れるし、頭の中で考えていたって楽しくなれそうにない。
大好きな食事も、ラーメンを食べる目的は何かと言われれば特にないし、食べたいから食べるわけでおいしいから食べたいわけで。
そうは言っても一度しかない自分の人生において、失くしたくないものや成し遂げたいことって誰にでもある。
どんな状況においても、だ。
生活のために夢を捨てるのか。はたまたどんなに苦しい中でも正面向いて夢へ向かうのか。
そのどちらも正解でどちらも間違えだったりする。
いろんな選択に追われる人生に正面向いて戦う勇気をくれるような一冊だった。
今がツラいと感じているみなさん。
大丈夫。
この本読んでもうひと踏ん張り。
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