【書評】森見登美彦最新刊『熱帯』は怪作であった【直木賞候補作品】
『熱帯』-森見登美彦著
怪作との出会い
師走の忙しさも落ち着き、年末ムードのこの季節みなさんいかがお過ごしでしょうか?
風邪やらなんやらで体調崩しやすいこの時期ですのでくれぐれもご自愛くださいませ。
さてさて、私には年末の仕事量に忙殺されながらも発売を楽しみにしていた小説がありました。
大ファンである森見登美彦氏の『熱帯』です。
季節と裏腹なタイトルなのが登美彦らしいなぁなんて少し思ったりもします。
11月16日発売でしたが、中々のお値段であるため少し購入を渋っていたのですが、12月の頭には抑えきれない欲求に負け、本書を胸に抱えて家に帰ったのでした。
装丁には本の島に座る達磨と男が描かれており、コレはい一体何を意味するのか・・・
期待に胸躍らせてページを開くと、物語は次の一文から始まったのです。
”汝にかかわりなきことを語るなかれ しからずんば汝は好まざることを聞くならん"
おいおい登美彦…ワクワクすんじゃんかよ…
マトリョーシカ人形のような物語の展開
「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」
一冊の『熱帯』という本が謎を呼び、物語が物語を運んでくるような、正にマトリョーシカで遊ぶように次々とつながれていく展開となっております。
物語の途中まで、登場人物が『熱帯』という怪書に翻弄される様が続きを早く読みたいと焦らせるほどの疾走感で描かれております。
作中には"沈黙読書会" "暴夜書房" "千一夜物語"等、興味をそそられるキーワードが無数に散りばめられており、そのイチイチが頭に残るので読んでて愉快です。
その最中に登場する点と点が繋がって線になっていくのが楽しく、ある一定地点までは大変素直に読めました。
しかし、ある瞬間からいきなり宇宙に飛ばされるような感覚に陥ります。
物語が180度転換し、違う物語になるのです。
その物語が奇想天外摩訶不思議夢話で面白いけれど、今までの話とまるっきり違う話が挫折しかけました(笑)
けれど、その一見「なんのこっちゃ?」と言うような領域を抜けると語られていたことの意味などが分かりましたんでなんとか報われた気持ちになりましたが。
その領域を抜けた後はクライマックスまで改めてマトリョーシカが始まり、最後のオチまで駆け抜けていきます。
物語が物語を呼び、いつの間にか現実か虚構か。
今読んでいるこの本はなんなのか。
思考が巡る展開。
「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」
この意味が最後最後のページでわかり、ぞわーっとしつつも熱い気持ちになりました。
今年一番の奇妙な読書体験
今年も色々と小説を読みましたが、間違いなくNO.1の奇書でした。
読了した今でもなんだか頭がグルグルするような読書体験は今年は言わず、今まで読んできた小説の中では群を抜いていたような気がします。
500ページ以上に渡る、『熱帯』と言う名の海の大航海は嵐が吹き荒れ、難破し、最終的に陸に打ち上げられたような感覚です。
普通の小説を読むのに飽きた方や、登美彦の変態的な小説体験をしたい方なんかには間違いなく楽しめる一冊です!!
ゆっくりとした年末年始を過ごしたかったり、帰省の電車で何もすることがない人なんかにも腰を据えて読める一冊なのでお勧めです!!
(ただ、普段読書をしない方には、ページ数も多いためあまりプッシュできないのが残念です・・・!!)
ぜひぜひお手に取って奇妙な読書の冒険へ出かけてみてください!!
↓最短で明日には届きます!『熱帯』の門は開かれるのを待っている!
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