【書評】仕事に疲れたあなた必読!『この世にたやすい仕事はない』津村記久子著
『この世にたやすい仕事はない』
-津村記久子著
好きなことしか仕事にしたくないなんて贅沢だ!
「好きなことしか仕事にしたくないなんて贅沢だ!」
と、心の中で大きな声で叫んでみても現実はそうもいかない。
みんな生きるのに必死でやりたくない仕事でも生活のために働いている。
誰だって好きなことを仕事にしたいと思うだろうし、実際好きなことを仕事にできている人もいるだろう。
しかし、幼いころから憧れていた仕事であっても何も悩みがなく仕事ができている人は稀ではなかろうか。
どんなに好きな仕事ですら何かしらの悩みがあるわけで、それでも生活を営んでいかなくてはならないのが人生である。
そう思うととたんに「はぁ、俺の人生は何の為にあるのよ」と勝手に哲学チックな勧化に至ったりする。
ただ好きな仕事以外の仕事でも、好きになれることはある。
学生時代私は出版社に勤めて編集者になりたかったけれど、今は健康食品の営業をしている。
今の仕事がやりたい仕事ではないけれど、案外楽しいし自分には向いているなーと思ったりもする日々だ。
前置きが長くなったが今回ご紹介する『この世にたやすい仕事はない』は、長年勤めた会社を退職し、その後転職を繰り返す女性主人公を描いた、オムニバス的お仕事エンタメ小説です。
"好きを仕事に!"とは少し違うけど、そんなお仕事小説を紹介します。
仕事を変える事って悪いこと?
この小説の主人公はとにかく早いスパンで転職を繰り返す。
1社目の会社には14年勤めたのだが、熱心に仕事に取り組みすぎた故、燃え尽きて仕事を退職し、それからは凡そ1年~2年の間に何社も渡り歩く。
時に「ある人を監視する仕事」であったり。
時に「お菓子の袋裏の小さなコーナーを企画する仕事」であったり。
時に「町内のポスターを張り替える仕事」であったり。
他にもユニークな仕事に彼女は就く。
なぜ彼女は仕事を転々としてしまうのか?
14年勤めて燃え尽きた経験から職安の女性職員より、「あなたは頑張りすぎてはいけません。あまり職場に干渉し過ぎないことです」と言うような言葉を貰ってもついつい彼女は頑張りすぎてしまい、その職に疲れて次の職場へと飛んでいく。
読んでいて終始考えていたのは、この"頑張りすぎる"という点である。
仕事を変える人が全員"辛抱がなくて打たれ弱い"だとか"我慢が足りない"だとか"ゆとり世代だから"だとかそういった人ばかりではない。
ついつい本気になりすぎて頑張りすぎてしまうがあまり、その仕事・職場が嫌いになってしまうことが多々あるという事だ。
正直、人間関係にもほとんど関与せずに仕事もなぁなぁにできる人であれば、会社員ほど楽な仕事はない。
これは社会人になってからひしひしと感じており、社会人の真理とも言える。
けれどついついまじめで頑張ってしまう本書の主人公のような人は、真剣に向き合うがあまり疲弊してしまう。
これを加味して考えたとき、「仕事を変える事って悪いこと?」とついぼやいてしまう。
もちろん転職を肯定しているわけではないし、ころころ仕事を変えることはいかがなものかと私自身も思ったりする。
けれど、仕事を頻繁に変えている人が"人間として失格だ!"とひとくくりにするのもいかがなものかと本書を読んで感じた。
どう仕事と向き合って生きていくか
お仕事エンタメ小説ということもあり、その職場職場で様々な"そんな仕事のあるある"的騒動が巻き起こり、その結果次の職場へと移っていく主人公。
毎回職安の社員から紹介される仕事にとりあえず挑戦し、違ったら辞めてを繰り返していく。
「彼女はどんなスタンスで仕事と向き合っていたんだろう?」
途中まで読んだ私の感想はこれである。
よく言う"あなたの軸は?""何を大切にしていますか?"みたいなことが見えてこないのだ。
けれども彼女は日々をそれなりに楽しみ、生活を続けている。
しかし、最後まで読んで肩の力がスッと楽になった。
最後の話で彼女は自分の心に気が付きやりたい仕事に出会うのである。
それは彼女が14年間続けた会社で行っていた業務と同じ業界。
私はこの最終話を読んだときに、「あぁもっと気楽に生きよう」と思えた。
どんなに遠回りをしても自分のやりたい仕事・やるべき仕事というのはいつか見つかると思えたからだ。
今がツラい人は辞めてもいい。
ムリをしない。
一度しかない人生なわけだしゆっくり進む時間があっても悪くない。
仕事に疲れている皆さん。
ぜひご一読を!!!!!
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