【書評】『ちいさなちいさな王様』
ちいさなちいさな王様
アクセル・ハッケ作
ミヒャエル・ソーヴァ絵
もうすぐ体重が3桁に差し迫っているわたくしぽんぽこである。
85kgを通り過ぎ、90kgの壁を突破すると、早いのなんの。
アッという間に95kgだ。
このままいけば気づかぬうちに体重が100kgに到達してしまう。
鯉が滝を登りきると龍になるが如く、私の体重が100kgを超えると何になるのか。
読者諸君にはぜひ期待してもらいたい。
きっと名実ともに”ぽんぽこ”になっていることだろう。
そんな私にも小さなころがあった。
白球を追いかけ、夢を語り、友人とかけっこをするような少年時代が存在していたのである。(悲しいかな今は追いかけすぎて私が白球そのものになってしまったのだが)
きっと今の自分を当時の自分が見たらこういうだろう。
「お前、痩せて松田龍平みたいになるって言っただろう!」
ってね。
「悲しいけどいいんだ。おいしいもの食べて楽しく過ごしてるからいいんだ。」
と、日々自分を慰める未来になると思ってもみなかっただろうなぁ。
とりあえず一曲聞いとく?
あのころの未来に僕らは立っているのかな?
そんなあのころの未来に向かって歩いている途中に何か大切なモノをなくしてしまったあなたに捧ぐのが、本日紹介する"ちいさなちいさな王様"!!
あなたの本棚の一角に入れてもらうべく今日も綴っていきます。
あらすじ
僕たちの世界の子供時代が人生の終わりに向かって訪れる王様とだんだん大人になるにつれて生活に疲れてしまっていく青年とのお話。
子供の頃は生活の中で新しい発見やわくわくすることがたくさんあったのに、日常に追われるあまりそんな楽しみを忘れていく青年と、偉そうに話をするちいさな王様との会話がコミカルなんだけどどこか暖かく描かれています。
読んでいてワクワクするというような類の小説ではありませんが、寝る前にこっそりと読みたくなる、"枕の側のお友達"のようなお話です。
暖かいタッチの挿絵の数々
本書の大きな魅力は装丁からもビンビン伝わってくるように、随所に出てくる挿絵がとても素敵なところだ!
出版社に勤める友人がSNSに写真をアップしていたをある日見て、本棚入りをさせなくてはならない衝動に狩られて本屋に向かったのを憶えている程である。
小説やエッセイとかって絵本や漫画と違って中を見たところでどんな内容なのかわからないじゃないですか。
活字が苦手な人って、中身をパラパラとめくって文字が羅列されているだけで嫌気がさしたりするもんだと思うんです。
けれどこの本には素敵な暖かい挿絵が随所に散りばめられていて、あなたの頭の中の想像を補助してくれるから読書初心者の方も安心!
疲れたときにこの絵を見るだけでも癒されますよ!
襲ってくる現実とどう戦っていこうか
時に我々は現実と戦わなくてはならない。
例えばダウンを羽織るような寒さの冬。
どんなに寒く辛い朝がやってこようとも布団から這い出て着替えをし、会社に向かはなくてはならない現実。
(そんな季節が足音をたててこちらに向かってきている。もうガクガク震えそう)
果たして僕らが日々戦っている現実とやらはいったい何なのだろう。
たくさん働いて輝いている人はたくさんいるし、わくわくする毎日を過ごしている大人だってたくさんいる。
反対に、毎日仕事が暇で張りのない人生を送っている人もわんさかいるのだ。
どんな人生を過ごすかはその人の勝手だし、それのどれもが正解だ。
だけれどせっかくなら楽しい人生の方がいいじゃないか。
楽しい現実の方がいいに決まってる。
(本書ではダメな自分も受け入れてくれる一面もあるんだけど、今回は違う角度から話を進めたい。読んでくれればわかるから。記事の最後にアマゾン貼っとくから。手に取って読んでみて)
ちょっと話はズレて、本書のあらすじをここで今一度したく思う。
本書に登場する王様は生まれた時が一番大きく、年をとるごとに小さくなり、小さい者こそ一番偉いという考えで生まれ育った王様は、年齢を重ねるうちに知識はなくなっていき、好奇心が膨れ上がって日常の様々なことを相方の青年に尋ねる。
「あのお店の人は何をしているんだ?」
「どうして喧嘩をしているんだ?」
「なんでお前は嫌なのに会社に行くんだ?」
実にどうでもいいことから抽象的なことなど、とにかく青年に聞いたりする。
青年も正直うっとうしくなる。
僕らが戦っている現実の中にも、当たり前なこと過ぎて気にもかけずに生活していることばかりだと思うんです。
いつも話している近所のおばちゃんの年齢も知らないし、僕なんかマンションの同じフロアの人の名前すらもわからない。
だけれど気に留めたこともない。
きっとわかってること、知ってることが多い方が人生楽しかったりするのかなぁなんて漠然と思ったりもした。
僕の中で楽しくすることやわくわくすることって知る行為だと思っている。
どんなに楽しいこともそれが楽しいと知っていないとやってみたいと思わないからである。
どんなにおいしい食べものも食べてみて初めてそのおいしさを知ることができる。
仮にそれがどんなに不味かろうとも笑い話に変えて楽しい経験となる。
だからこそ好奇心を止めずに知ることを怠らず生活したいな~。
自分で楽しい現実を作り出していきたいな~。
なんて思いましたね。
最後になりますが、青年が話した言葉が印象的だったので書いときます。
「きっと、小さな王様がかけてさびしい思いをしている人が、世の中には、本当はもっとたくさんいるんだよ。ただ、そのことに気がついてないだけで」
皆さんの心の中に居るちいさなちいさな王様が消えませんように
- 作者: アクセルハッケ,ミヒャエルゾーヴァ,Axel Hacke,Michael Sowa,那須田淳,木本栄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/10/18
- メディア: 単行本
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