【書評】『猫が感じる素敵な退屈を描いた一冊』
『退屈をあげる』坂本千秋著
猫のように生きたい。
そんな風に思うときが皆さんにもあるのではないだろうか。
何となく堕落して自由に出かけ、ぐったりとしたい。
暖かい素敵な天候の中であくびでもしながら塀の上で眠ったりしたい。
そんな事を思うときがある事でしょう。
私はそんな日々にあこがれ日々過ごしています。
そんなことを思いながら高円寺を散歩していたときに立ち寄った本屋さんで購入した本作、『退屈をあげる』である。
以前、有名な校閲者の方が紹介して気になってはいたのだが手に取る事はなく、大手書店で出会う事はなかったので出会えた喜びもあり、迷わず購入。
そしてなんと坂本さんの直筆サイン入り。にゃんとも素敵なイラスト!
あらすじ
著者と愛猫との日常生活から別れまで、愛猫の視点から描いた画文作品。
同時収録されているエッセイ、『幻の猫』では筆者と愛猫の出会い等が細かく書かれている。
他愛もない素晴らしい日常が、素敵な紙版画で描かれたイラストと暖かい言葉で紡がれています。
ごはんたべて ねて うんちして くり返し
猫の視点から見た日常を何ともほのぼのしく暖かい言葉で描かれていて、気持ちがとても落ち着く本作。
本作を通して、「退屈」とされている猫の日々は、忙しく生活している私たちの、とても素敵な小さな幸せに気づかしてくれるような気持ちにさせてくれた。
当たり前のように食事をし、夜には疲れて眠り、トイレで用をたす。
そんな日常を愛おしくさせてくれるような本である。
私が本作の中で最も好きなフレーズがこれだ。
『ごはんたべて ねて うんちして くり返し この愛しい退屈は空のうえでもずっとつづくのだと思う』
猫が別れの際に思う事を描いた一文である。
何たるこの当たり前を尊く思うこの気持ち。
ネット社会でSNSに溢れるとても充実した生活を横目に生活していると失っていく、今ある素敵な日常を愛する気持ち。
日々の当たり前を愛おしく感じ、この幸せがいつまでも保障されてると考える事ができればきっと少しは悩みも晴れるのではなかろうか?
皆さんも疲れた夜の眠る前のお供に読んでみてはいかがでしょうか。
きっと落ち着いた気持ちで眠りにつけますよ。