LEGADO

趣味:読書の会社員が気ままに綴る書評・読書記録のブログ

【書評】『ブラックユーモアも癖になる!可愛い動物たちの短編集』

f:id:PonPokoLT:20180911230026j:plain

ほんの豚ですが-佐野洋子

この作品の名前を見ましてね、"ほんの○○ですが"って思いのほかいろんな場面で使う言葉なんだなぁって感じたんですよ。

 

ほんの"気持ち"ですが

 

ほんの"僅か"ですが

 

ほんの"お口汚し"ですが

 

気になって調べてみたらほら。色々あるものですねぇ。

いろいろある中でも今回紹介するのがこちら。

 

"ほんの豚ですが"

 

はい、どーん。"ほんの豚ですが"。

なんでしょうね。

普段使いませんよね。

聞いた事あります?

 

人間界に置き換えるなら…

 

日本人に置き換えるなら"ほんの佐藤ですが"。

アメリカ人なら"ほんのレベッカですが"。

 

とか

いや、違和感!!すこぶる違和感!!

 

謙遜して使うような言葉"ほんの○○ですが"の○○に名詞を使うだなんて、

さぞ素敵な豚なんでしょうね。

 

そんな個性的な名前の本作を今回はご紹介します。

 

 

あらすじ

 本作は、小説ではなく様々な動物達が登場する短編集となっています。

ナルシストで自信家な狐であったり、ちゃんと話を聞けない蜂の子供や、みんなに好かれたいパンダだったり、それはもうたくさん!いっぱい出てくるのです!

 

そんな愉快な動物達のエピソードの中で、人生の"あるある"や、生活の中の"それわかる〜"であったり、生きていく中で大切な"気づき"を与えてくれる一冊となっております。

 

また、全ての短編の中にそのエピーソードに登場する動物のイラストが描かれており、見るたびに癒されます。(私は本屋さんでイラストが可愛くてジャケ買いしました。) 

 

そんな「人生あるあるそれわかる〜」的な本作より、私が気に入ったエピソードを2つ紹介しましょう!

 

 

オススメエピソード2選

 

①虫

f:id:PonPokoLT:20180911230108j:plain

 ひとつめは虫という短編。

もはや短編と呼べるのか。(なんでも良い、とにかく素敵なのだ)

どちらかと言うと詩のような一作となっています。

 

とにかく何かになりたくて、でも何にもなれなかった自分たちが中学生や高校生の頃を一瞬にして思い出させてくれるような、この作品。

 

『わたしたちただ思春期なのよ。』

 

電通のコピーライターでも書けそうにないくらいインパクトのある言葉ですよね。

 

自分に根拠のない自信を持っていて、一括りにされるのが嫌な気持ちを、蝶になる前の毛虫で表現しているところが最高にクールでかっこいいなぁなんて思って、とても印象に残りました!

(もしかしたら蛾になるかもしれないけどね。それでもいいじゃない。)

 

②猿

f:id:PonPokoLT:20180911230947j:plain

f:id:PonPokoLT:20180911231015j:plain

2つめは猿という短編。

猿の夫婦の話が短い文章の中で描かれている作品。

若い頃は喧嘩ばかりなのに、年齢を重ねてお互いがボケ始めると感謝を伝える事ができるようになる。

 

年齢を重ねる事によってうまれる良い事に気づかされた。

自分に素直になり、相手にも素直になれる。若い頃には案外できない事だったりする。

年齢を重ねて、老いてゆき、ボケる。そして死へと近づく。

そんなときに、どんな形であれ感謝し合えるパートナーがいるというのは素晴らしい事だなぁとしみじみ感じた作品でした。

 

それぞれの生活の中で

きっとそれぞれの生活の中に、些細な出来事が満ちあふれてると思うんです。

上司がとんちんかんなこと言ってたりだとか、一緒に暮らすおじいちゃんが食べたはずの夕飯を「夕飯はまだなの?」と何回も聞いてきたりだとか。

 

そんなそれぞれの生活の中の出来事は、嫌な出来事でも視点を変えてみたり、客観的に見てみるとおもしろおかしいことだったりします。

「夕飯食べてるのに何回も確認するんだよ?バカじゃない?(笑)」

くらいに思えたりするかもしれません。

 

素敵になモノに変えるのか。

はたまた嫌なモノに変えるのか。

それは自分自身ですよね。

ありきたりですがそこはやっぱり。

そんな事を本作品"ほんの豚ですが"を読んで思いました。

 

ひとつひとつの話はとても短くて読みやすいので、読書が苦手な人にもオススメです。

サクっと小話を読みたい人なんかにもいいでしょう!

 

通勤・通学の鞄の中にこっそり忍ばせてみてはいかがですか?

 

 

ほんの豚ですが (中公文庫)

ほんの豚ですが (中公文庫)

 

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村